少子高齢化によって起こるマンション修繕の問題点は「高齢化が進む住民」「高齢化によって起こる長期修繕計画の問題」のページで説明してきました。
では、そのような問題を解決するために何をすればいいのか? それは計画修繕周期を長期化させることです。
「そろそろ修繕時期だけどなるべく安価に済ませ、次の修繕に備えたい」
そんな場当たり的な考えを少しでも持っていると、修繕回数が増すだけで逆にコストが上がってしまいます。大事なのはランニングコストの削減。そのために必要な施策は修繕周期を延ばし、工事回数を減らすことです。下記のグラフは修繕周期を延ばした時の工事回数の比較。
※新築後12年で1回目の修繕を行うので、それ以降を初回修繕としています。
12年周期で行うと築60年が経過する頃に6回の大規模修繕を行うことになりますが、17年周期にすると築80年で修繕回数を4回にまで減らすことができます。国土交通省の発表によると大規模修繕周期は平均12年。しかし修繕周期は15~17年に延ばすことは可能です(※)。その鍵を握るのは施工精度と仕様。
※年数は建築物の状態により左右されます。
大規模修繕周期が平均12年になっている根拠は以下の通り。
主に管理会社が上図を基に12年周期を常態化・標準化しており、この周期が成立する理由として次のようなことが挙げられます。
仕様を下回る施工により、上図に近い線を描いてしまう。
長持ちするにしても強制的に12年周期にしてしまう。
上記で挙げた「屋根他防水工事の修繕周期」を建物調査による実際値でグラフ化すると次のようになります。
仕様に準拠する屋根防水の実際の故障率は、メーカー理論値とは異なり上図のような線を描いていきます。
そのため業者を選定する入札の際は、
技術基準を設けた・価格による競争入札(設計コンサル・施工会社)
が大事。それにより
仕様に準拠する品質確保が可能になります!
また、塗替えに関しては保護層の性能・機能が劣化する前に実施すると延命効果は抜群に向上し、塗替え費を低く抑えられます。その際の絶対条件は「建物・部位等の条件に適合する仕様」「高度な品質管理技術」。この条件を満たすことで修繕周期は飛躍的に延びます。
下図は同じ条件・仕様で工事を発注したときの重層構造、単層構造、それぞれの費用分配率です。
単層構造…管理会社やゼネコンを通さない構造
重層構造…管理会社やゼネコンを通す構造
一般的な大規模修繕工事の下請け構造(重層構造)の特徴は、サブコンの適正価格が下回るほど、下層で重層化が進むことです。重層化が進むにつれて下請けの分配率が低下し、おのずと品質も低下していきます。また、工事終了後、現場に関わった職人が再び当地を訪れる事もなく、住民に一番身近だったはずの工事会社との関係性も薄れてしまいます。一方、単層構造による発注では、発注金額が低くても中間マージンが発生しないため、下請け業者に適正な金額が配られるだけではなく、資金に余裕が出るため良質の部材が使用可能。なにより職人とマンション住民との関係が密になり、よりきめ細かな修繕も可能となります。